を出した。また、面白くないことを示すには、そのやさしい顔を軽蔑《けいべつ》的につき出した。それらのかわいらしい顔つきのうちには、人から見られてると知ってる時ほとんどだれでもしずにはいられないような、無邪気な道化《どうけ》た様子が交っていた。また彼女は時とすると、真面目《まじめ》な楽曲の間、しかつめらしい表情をつとめることもあった。そして横顔を向け、聴《き》きとれてるふりをし、頬《ほお》に微笑を浮かべながら、彼から見られてるかどうかを横目でうかがっていた。二人はかつて一言もかわしたことがなく、出る時いっしょになろうとつとめたことも――(少なくともクリストフの方は)――なかったが、それでもごく親しい友だちとなっていた。
ついに偶然にも、ある晩の音楽会で、二人は相並んだ席についた。ちょっとにこやかなためらいのあとで、親しく話を始めた。彼女は美しい声をもっていた。音楽について愚劣なことをたくさんしゃべった。少しも理解がないくせに通がっていたのである。しかし音楽を非常に好んでいた。最悪のものと最良のものとを、マスネーとワグナーとを好んでいた。退屈するのは凡庸《ぼんよう》なものにばかりだった。彼
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