気を病むに及ぶものか。ちょうど天気もよかった。彼はムードンへ出かけた。
彼は歩行の飢えを感じていた。歩いてると音楽上の収穫が増してきた。彼は音楽に満ちていて、あたかも蜂《はち》の巣のようだった。そして蜜蜂《みつばち》の金色の羽音に微笑《ほほえ》んでいた。それはたいてい、転調に富んだ音楽だった。それから、躍《おど》り立つ執拗《しつよう》な魅惑的な律動《リズム》……。室内に蟄居《ちっきょ》してしびれがきれたら、律動《リズム》を創作しにでも出かけるがいい! パリー人らのように動きのない微細な和声《ハーモニー》と混和させるには、もってこいだ!
彼は歩き疲れると、森の中に寝そべった。木々の葉は半ば枯れ落ちて、空は雁来紅《がんらいこう》の花のように青かった。クリストフはうっとりと夢想にふけった。その夢想はすぐに、十月の靄《もや》から落ちてくる柔らかい光の色に染められた。彼の血は高鳴っていた。彼は自分の思想の早波が通りすぎるのに耳傾けた。たがいに争闘してる老若の世界、また一都会の住民のように彼のうちに生きている、亡《な》き魂の断片、古《いにしえ》の客人寄食者、それらが地平線の四方から湧《わ》き上
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