クリストフは幸福だった。
とは言え、彼の境遇は最も困難になっていた。唯一の財源だったピアノの教授のわずかなものを、皆失ってしまった。ちょうど九月のことで、パリーの上流社会は休暇中だった。他の弟子《でし》を見つけるのは困難だった。彼が見出した唯一の弟子は、頭はよいが分別の足りない技師で、四十歳になってヴァイオリンの名手になろうと思いついた男であった。クリストフはヴァイオリンがそう上手《じようず》ではなかった。それでもこの弟子よりは巧みだった。そしてしばらくの間彼は、一時間二フランのきめで週に三時間教えてやった。しかし一か月半ばかりたつと、技師は飽いてしまって、自分の重大な天職は絵画にあることをにわかに発見した。――ある日彼がその発見をクリストフに語った時、クリストフはたいへん笑った。しかし笑い終えてから、懐《ふところ》勘定をしてみると、最後の謝礼としてもらった十二フランがあるきりだった。それでも彼はあわてなかった。ただ、生活の他の方法を捜さなければならないが、出版共著の方にでもまた奔走を始めてみようかと、考えただけだった。それはたしかに愉快なことではなかった。……が、馬鹿な!……前から
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