れてることであり、満ちあふれて流れてることである。フランスにおいては、音楽はパストゥール式|濾過器《ろかき》によって、ていねいに口をふさいだ瓶《びん》の中に、一滴ずつ集められている。そして無味な水ばかり飲んでいるそれらの連中は、ドイツ音楽の大河にたいして嫌悪《けんお》の感をいだいている。彼らはドイツ精神の欠点をいちいち拾い上げるのである!
「憐《あわ》れなる小人輩よ!」とクリストフは、先ごろ自分自身も同様に笑うべきものであったことを思い出さないで考えていた。「彼らはワグナーやベートーヴェンのうちにも欠点を見出している。彼らには欠点のない天才が必要なのかもしれない。……あたかも、嵐《あらし》は吹き荒れても、事物のりっぱな秩序を少しも乱すまいと努める、とでもいうかのように!……」
彼は自分の力に欣喜《きんき》しながらパリーの中を濶歩《かっぽ》した。理解されなくとも結構だ。その方がかえって自由だろう。創造するのは天才の役目であるが、内心の法則に従って有機的に組み立てられた完全な一世界を創造するには、すっかりその中に生きなければならない。芸術家は孤独でありすぎるということは決してない。恐るべ
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