にか切りぬけてゆけるものだ……。」
彼はヨハン・セバスチアン・バッハの魂の大洋が怒号するのを聞いた。※[#「風にょう+(火/(火+火))、第3水準1−94−8]風《ひょうふう》、吹き荒れる風、飛び去る人生の暗雲――喜悦や悲痛や憤怒《ふんぬ》に酔った諸々《もろもろ》の民衆、その上に翔《かけ》る、温和に満ちたキリスト平和の主宰者――その足音で世界を揺がす聖なる婚約者の前に、歓喜の叫びを発して飛び歩いてる、夜警らの声で眼を覚ます、諸々《もろもろ》の都市――思想、熱情、音楽的形象、勇荘な生活、シェイクスピヤ式の幻覚、サヴォナロラ式の予言、または皺《しわ》寄った眼瞼《まぶた》と挙げた眉《まゆ》との下に輝いてる小さな眼をもち、二重頤《ふたえあご》をもった、チューリンゲンの少年歌手のいじけた身体にこもっている、牧歌的な叙事詩的な黙示録的な幻影、などの驚くべき貯蔵……。彼はその姿をありありと見た。陰気で、溌剌《はつらつ》として、多少|滑稽《こっけい》で、比喩《ひゆ》と象徴とがいっぱいつめ込まれた頭脳をもち、ゴチック的でまたロココ的で、怒《おこ》りっぽく、頑固《がんこ》で、清朗で、生命にたいする熱情と
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