けないこと、彼のことを考えてる人がいること、彼を愛してる人がいること、彼のために神に祈ってる人がいること、などが告げてあった。――しかも憐《あわ》れな手紙、愚かにも途中に迷ってしまって、彼の手には届かなかった。
それからは、単調な清朗な日々が、この遠い女友だちの生活のうちに開けていった。そして、イタリーの平和が、平穏と落ち着いた幸福と無言の観照との精神が、その清いひそやかな心の中に返ってきた。その底にはなお、小揺《こゆる》ぎもない小さな炎のように、クリストフの思い出が燃えつづけていた。
しかしクリストフは、遠くから自分を見守《みまも》っていてくれて、将来自分の生活中に大なる場所を占むることとなる、この純朴《じゅんぼく》な愛情の存在を知らなかった。また彼は、自分が侮辱されたあの音楽会に、将来友たるべき一人の男が、手を取り合いながら相並んで進むべき親しい道づれが、出席していたことを知らなかった。
彼は孤独だった。孤独であるとみずから思っていた。それでも彼は少しも失望しなかった。先ごろドイツで苦しんだあの苦々《にがにが》しい悲しみを、彼はもう感じなくなっていた。彼はいっそう強くなりい
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