ことは彼ら二人にとっていかにも困難なことではあったが、絶望的な意志の努力でやってのけた。
グラチアはひっそりとした広い庭の中にもどってきた。親しい自然と愛する人々とをふたたび見出して喜んだ。彼女の痛める心は晴れていったが、太陽の光に少しずつ消えてゆく霧の帷《とばり》のような北方の憂鬱《ゆううつ》を多少、その心の中に彼女は持ち帰って、なおしばらくは保っていた。彼女は時おり、不幸なクリストフのことを考えた。芝生《しばふ》の上に寝ころんで、耳|馴《な》れた蛙《かえる》や蝉《せみ》の声を聞きながら、あるいはピアノの前にすわって、昔よりはしばしばそれと心で話をしながら、彼女はみずから選んだ友のことを夢想した。幾時間も彼と声低く語り合った。いつかは彼が扉《とびら》を開いてはいってくることも、あり得べからざることだとは思えなかった。彼女は彼に手紙を書いた。そして長く躊躇《ちゅうちょ》したあとで、無名にしてその手紙を贈った。ある朝ひそかに、広い耕作地の彼方《かなた》三キロも隔たった村の郵便箱に、胸をとどろかせながらそれを投じに行った。――親切なやさしい手紙であって、彼は孤独ではないこと、落胆してはい
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