見当がつかなかった。ストゥヴァン夫人はじりじりしていた。コレットはこのうえもなく面白がっていた。事情の滑稽《こっけい》さを残らず味わっていた。かくまでクリストフが無頓着《むとんじゃく》なのを不快に思うわけにはゆかなかった。彼が一つの力であることを彼女は感じて、かえって同情の念が起こった。しかしまた滑稽でもあった。そして彼を弁護してやることをよく差し控えた。ただ小さなグラチア一人が、涙を浮かべるほどその音楽に感動していた。彼女は客間の片隅《かたすみ》に隠れていた。しまいには、自分の感動を人に見られたくないので、またクリストフが嘲笑《ちょうしょう》されるのを見るのがつらくて、逃げ出してしまった。
数日後に、晩食の時、ストゥヴァン夫人は彼女の前で、クリストフからピアノの稽古を受けさせることを話した。グラチアははっとして、スープ皿《ざら》の中に匙《さじ》を取り落し、自分と従姉《いとこ》とにスープをはねかけた。コレットは、行儀よく食卓につく教えをまず受けるべきだと言った。ストウヴァン夫人は、その方面のことはクリストフには頼めないと言い添えた。グラチアは、クリストフといっしょにしてしかられたのが
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