ンは盛んに説きすすめ、グージャールはいかにも信じきってるふうだったので、クリストフもついに我《が》を折った。彼は卑怯《ひきょう》だった。それほど自分の音楽を聞きたがっていたのである。
 万事はルーサンの手で容易に運んだ。劇場理事らも芸術家らも競って彼の意をむかえた。ちょうどある新聞が、慈善事業のために盛んな昼興行《マチネー》を催しかけていた。その中でダヴィデ[#「ダヴィデ」に傍点]が上演されることになった。りっぱな管弦楽団が集められた。歌手たちの方については、ダヴィデの役に理想的な者を見出したとルーサンは言っていた。
 試演が始まった。管弦楽団はフランス流に多少訓練が欠けてはいたが、最初の一回をかなりよくやってのけた。サウルの歌手は、やや疲れたしかしりっぱな声をもっていた。そして自分の職務をよく心得ていた。ダヴィデの歌手の方は、背の高い太った格好のよい美人であったが、その声は感傷的で下品であって、插楽劇《メロドラマ》的な顫音《トレモロ》と奏楽珈琲店的な風情《ふぜい》とで重々しく広がっていった。クリストフは顔をしかめた。最初の小節を幾つか歌った時から早くも、彼女にはその役が勤まらないこと
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