そして実際に国家は、それを顧客らにかならず振りまいていた。権力者の子や甥《おい》や縁故の者や部下などに、名誉と仕事とをおごってやった。議員らは歳費の増額をみずから投票していた。財産や地位や肩書など国家のあらゆる資源が、ほしいままに濫費されていた。――そして、上層の実例の痛ましい反響として、下層には怠業が起こっていた。祖国にたいする反抗を教える小学教員、手紙や電報を焼く郵便局員、機械の歯車仕掛けに砂や金剛砂を投げ込む工場職工、造兵廠《ぞうへいしょう》を破壊する造兵職工、焼かれる船舶、労働者自身の手によってなされる恐るべき労働の浪費――富者の破壊ではなく、世界の富の破壊であった。
 この仕事を確認するために、選ばれたる知者らが、民衆のこの自殺的行為を、幸福にたいする神聖なる権利という名において、理性と権利との上に立脚せしめて喜んでいた。病人めいた人道主義は、善悪の差別を無視し、罪人の「責任なき神聖なる」人そのものにたいして憐憫《れんびん》の情を寄せ、罪悪の前に平伏して罪悪に社会を委《ゆだ》ねていた。
 クリストフはこう考えた。
「フランスは自由というものに酔っている。狂乱を演じたあとで酔い
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