は残されなかったであろう。
理屈癖の民衆にも、彼らを救う一つの長所――矛盾|撞着《どうちゃく》――があることを、クリストフは知らなかった。
フランスの政治家らもその例に漏れなかった。彼らの専制主義は無政府主義で緩和されていた。彼らはたえず一方の極端から他の極端へと移っていた。左方において思想の狂信者らにすがるならば、右方においては思想の無政府主義者らにすがっていた。彼らの周囲にはいつも、享楽的な社会主義者やくだらない猟官連の群れが見えていた。こういう連中は、勝利にならないうちは用心して戦闘に加わらないで、いつも自由思想家軍のあとについて行き、その勝利のあとには毎回、敗北者らの遺留品を奪い合った。理性の選手らが努力していたのは、理性のためにではなかった……かくも汝努むれど[#「かくも汝努むれど」に傍点]、そは汝自身のためならず[#「そは汝自身のためならず」に傍点]……。それはこの一所不住の利用者らのためにであった。彼らは自国の伝統を喜んで蹂躙《じゅうりん》するが、一つの信仰を破壊してそのあとへ他の信仰をすえるの意志はなく、そのあとへ自分自身をすえようとばかりしていた。
クリストフ
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