であると信じ、それを皆フランスから駆逐しようと欲していた。また西方主義者らは、ライン河以東には何物も認めようとしなかった。北方主義者らは、ロアール河以南には何物も認めようとしなかった。南方主義者らは、ロアール河以北の者を野蛮人だと呼んでいた。その他、ゲルマン民族たることを光栄としてる人々、ゴール民族たることを光栄としてる人々、そして最も狂愚なのは、父祖の敗亡を誇りとしてる「ローマ人」ら。あるいはまた、ブルトン人、ローレン人、フェリブル人、アルビジョア人。それから、カルパントラスの者、ポントアーズの者、カンペル・コランタンの者。いずれも皆自分自身をしか認めず、自分であることを貴族の肩書とし、他人が異なった意見をもつことを許さなかった。この種の人間にたいしては施す術《すべ》がない。彼らはいかなる理屈にも耳を貸さない。自分以外の全世界を焼きつくすか、自分が焼かれるか、いずれかのほかはないのである。
 かかる民衆が共和政体にあるのは仕合わせなことだと、クリストフは考えた。それら小さな専制者らは、たがいに滅ぼし合っていたからである。もし彼らの一人が国王になっていたとすれば、他のだれにも十分の空気
前へ 次へ
全387ページ中252ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング