象的観念の狂人、論理の病人を、見出したのであった。彼らはたえず自由のことを口にしていたが、最も自由を了解せず最も自由に堪えきれぬ人々だった。知的熱情のために、もしくは常に理性を失うまいとしてるために、これほど冷淡な苛酷《かこく》な専制的性格になってる者は、世界のどこにも見出されないほどだった。
それはただ一党派のことだけではなかった。どの党派も同じことだった。彼らは、自分の祖国の、自分の地方の、自分の団体の、自分の狭い頭脳の、政治的もしくは宗教的の形式以外には、何物も見ようとしなかった。そのうちには反ユダヤ主義者らがいた。あらゆる財産上の特権者らにたいする激しい憎悪のうちに、全身の力を費やしつくしていた。なぜなら彼らは、あらゆるユダヤ人を憎んでいたし、自分の憎むあらゆる者をユダヤ人だと呼んでいた。また国家主義者らがいた。他のあらゆる国民を憎み――(ごく温和な時には軽蔑《けいべつ》するだけで満足していたが)――自国民のうちにおいてさえ、自分らと同じ考えをしない人々を、外国人だの変節漢だの叛逆《はんぎゃく》者だのと呼んでいた。また反新教徒らがいた。すべての新教徒らはイギリス人かドイツ人か
前へ
次へ
全387ページ中251ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング