を正確に聴き取りまたは暗誦してるのみだった。自分にとっても魂は必要ではなかったから、音楽のうちにも魂を捜そうとしなかった。愛想がよく怜悧《れいり》で単純でいつも人の世話をしたがってる彼女は、だれにでもそうであるが、クリストフにも歓待をつくしてくれた。クリストフは別にありがたいとも思わなかった。彼は彼女に多くの同情を寄せていなかった。いてもいなくても同じような者だと思っていた。彼女が夫の情事を知りながら情婦らとともに夫を分有して満足してることをも、彼はわれ知らず許しがたく思っていたに違いない。受動的だということはあらゆる悪徳のうちでも、彼が最も許しがたく思ってたものである。
アシル・ルーサンにたいしては、彼はもっと親しい交わりを結んだ。ルーサンは他の芸術を愛すると同じように、音楽をも粗野ではあるが真面目《まじめ》な心で愛していた。一つの交響曲《シンフォニー》を愛する時には、それといっしょに臥《ふ》せるような様子だった。教養は浅薄だったが、それを巧みに利用していた。この点においては彼の妻も何かの役にたった。そして彼は、自分と同じような強健な一平民の姿をクリストフのうちに認めて、クリストフ
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