と、通俗大学にも芸術を普及させること、博愛的事業や児童心理学などに従事すること――それも大した熱心や深い興味をもってではなく――たえずある学科を暗誦《あんしょう》せんとし自分の知識を自負してる教育ある若い女に見るような、無邪気な衒学《げんがく》心、それからまた、生来の温良な性質、気取りたい性質、などが入り交った心持をもってであった。彼女はただ何かをしないではおれなかった。しかし自分のしてる事に興味をもつ必要はなかった。いつも指先に編み物をもてあそんでしきりなしに針を動かし、あたかも世界の安危はその用もない仕事にかかってるとでもいうようなふうをしてる婦人が、世にはよくあるものだが、ちょうどそういう熱中的な仕事ぶりに彼女のも似ていた。そしてまた彼女のうちには――「編み物をする女」と同じく――自分を手本として他の女に教えをたれる、正直な婦人の小さな虚栄心があった。
 代議士は彼女にたいして温《あたた》かい軽蔑《けいべつ》心をいだいていた。彼が彼女を妻に選んだのは、彼の快楽と安静とに好都合だった。彼女は美しかった。彼はその美を享楽して、それ以外は何にも彼女に求めなかった。彼女も彼にそれ以上を求
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