椅子《いす》をかざして対抗していた。クリストフはフランス人がなお何かを信じてることに気づいた――何をであるかはまだわからなかった。人の説明によれば、一世紀間の共同生活の後に国家は教会と分離したのであって、教会が快く別れ去ることを欲しなかったので、法と力とをそなえた強い国家は、教会を駆逐してるのであった。クリストフはそれを適宜なやり方だとは思わなかった。しかし彼は、パリーの芸術家らの無政府的享楽主義に弱らされていたので、いかにつまらない主旨にせよ、それに熱中せんとする人々に出会うと、ある喜びを感ぜざるを得なかった。
 彼はやがて、そういう人物がフランスにはたくさんいることを認めた。政治新聞はホメロスの英雄らのようにたがいに戦っていた。内乱を煽動《せんどう》する記事を毎日掲げていた。実を言えば、それもただ言葉の上のことだけで、実際の腕力|沙汰《ざた》になることはめったになかった。けれども、他人が書いてる道徳を実地に行なうような率直な者も、いないではなかった。すると、不思議な光景が見られるのであった。フランスから分離したつもりでいる地方、脱走した連隊、焼かれた県庁、憲兵隊の先頭に立って馬に乗
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