機嫌《ふきげん》な顔をし合った。ついには彼女の方から、口実を設けて稽古の回数を減らした。彼もまた口実を設けてストゥヴァン家の夜会へ招待されたのを断わった。
パリーの社交界はもうたくさんだった。その空虚、無為、精神的無力、神経衰弱、理由も目的もなくただ空費される妄評《もうひょう》、などに彼はもう堪えることができなかった。芸術のための芸術の、また快楽のための快楽の、この沈滞せる雰囲気《ふんいき》の中に、どうして一民衆が生活し得るかを、彼は怪しんだ。それでもこの民衆は生活していた。かつては偉大だった。まだ世界においてかなりりっぱな顔つきをしていた。遠くからながめる者には幻をかけさしていた。しかし、どこからその生存の理由をくみ取っているのか? 何物も信ぜず、快楽をしか信じていないのに……。
クリストフはそこまで考えを進めていると、青年男女の騒々しい一群に、往来の中で出会った。彼らは一つの車をひいていた。車の中には一人の老牧師がすわって、左右の人々に祝福を与えていた。その少し先を見ると、フランス兵らが斧《おの》を振りあげて、教会堂の扉《とびら》をこわしており、それにたいしてりっぱな紳士らが、
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