ことだった。すると彼女は、自分に快い性癖と戦わないで満足して、こうあるのが当然だと勝手な理屈をつけ、どうにもできない――(悲しいかな!)――ことにたいしては、反抗しないで寛大であるのがすなわち賢明なやり方だと、勝手に考えた。それこそ、実行に少しも困難でない賢明なやり方であった。
 清朗な心で人生をながめ得る者にとっては、社会の胸の中に、皮相な文明の極度の精練と深い動物性との間に、常に存在する矛盾は、大なる興味を含んでるものである。化石や化石された魂などでいっぱいになっていないあらゆる客間は、あたかも二つの地層のように、たがいにつみ重ねられた二層の会話を現わしている。その一つは――皆が耳にしてるもので――知能のうちにある。他の一つは――あまり人に気づかれはしないが、しかし最も大きなもので――本能のうちに、動物性のうちにある。それら二つの会話は、しばしばたがいに撞着《どうちゃく》する。精神が慣習の通貨をたがいにかわしてる一方に、肉体は欲望や怨恨《えんこん》を口にし、あるいはさらに多く、好奇や倦怠《けんたい》や嫌悪《けんお》を口にしている。その動物性は、幾世紀もの文明によって馴養《じゅんよう
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