い人物でもあった。
 それは、貴族的な文学を書いたり第三共和政の貴族をもって任じたりしてる、成金の息子連中の一人だった。名前をリュシアン・レヴィー・クールといった。両方に広く離れた眼、鋭い眼つき、曲がった鼻、厚い唇《くちびる》、ヴァン・ダイク風に先とがりに刈り込んだ金褐色《きんかっしょく》の髯《ひげ》、よく似合ってる早老の禿《は》げかかりの頭、舌ったるい言葉つき、優美な物腰、いつも揉《も》み手をしてる細い柔らかい手、をもっていた。非常な丁重さを、巧妙な愛想を、いつも装《よそお》っていて、実は嫌《きら》いで排斥したがってる者にたいしてもそうだった。
 クリストフは前に、文学者らの晩餐《ばんさん》会へシルヴァン・コーンから初めて連れて行かれた時、この男に会ったことがあった。そして、言葉をかわしはしなかったが、その声を聞いただけですでに、一種の嫌悪《けんお》を覚えた。彼はこの嫌悪の理由が自分でもわからなかったが、あとになってその深い理由がわかるようになってきた。人には愛情の突発もあれば、また憎悪《ぞうお》の突発もある――と言うのが悪ければ――(あらゆる情熱とともに憎悪という言葉をも恐れるやさ
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