た。彼女は感動した媚《こ》びある流し目で、彼に感謝した。――しかし彼女の生活は、少しも変化しなかった。ただ一つの気晴らしがふえたにすぎなかった。
彼女の一日は転身の連続だった。非常に遅《おそ》く午《ひる》ごろに起き上がった。不眠症にかかっていて、明け方にならなければ眠れないのだった。昼間は何にもしなかった。一つの詩句、一つの思想、思想の断片、会話の思い出、一つの楽句、自分の気に入った面影、などをとり留めもなく心にくり返した。ほんとうに気分がはっきりしてくるのは、午後の四時か五時ごろからであった。それまでは、眼瞼《まぶた》が重く、顔がむくんで、不機嫌《ふきげん》そうな眠そうな様子をしていた。そして幾人かの親しい友だちが来ると、彼女は初めて元気になった。その友だちらも皆、彼女と同様に饒舌《じょうぜつ》で、彼女と同様にパリーの噂話《うわさばなし》を聞きたがっていた。皆はいっしょになって、際限もなく恋愛を論じた。恋愛の心理、それこそ、化粧や秘密事や悪口などとともに、いつも変わらぬ話題だった。彼女の周囲にはまた、隙《ひま》な青年連中が集まっていた。彼らは日に二、三時間は、女の裳衣《しょうい》の
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