つけてください。私はむちゃくちゃになることがよくありますの。するともうどうしていいかわからなくなります。『争ったって何になろう? 苦しんだって何になろう? あれだってこれだって同じことだ。だれだって構わない、なんだって構わない!』と自分で考えます。ほんとに恐ろしい心ですわ。そんな心になりたくありません。私を助けてください、助けてくださいね!」
彼女はがっかりしたふうで、十歳も老《ふ》けたように見えた。従順な懇願的なやさしい眼で、クリストフをながめていた。彼は向こうの望みどおりにすべて誓ってやった。すると彼女は元気づき、笑《え》みを浮かべ、また快活になった。
そして晩には、彼女はいつものとおりに、笑ったりふざけたりしていた。
その日以来、二人はきまって親しい話をした。室には二人きりだった。彼女はなんでも思うまま彼へうち明けた。彼はそれを理解して助言してやるのに、たいへん苦心した。彼女はその助言に耳を傾け、場合によっては、ごくおとなしい小娘のように、叱責《しっせき》を真面目《まじめ》くさって注意深く聞いた。それは彼女にとって、憂《うさ》晴らしでもあり、面白くもあり、支持でさえもあっ
前へ
次へ
全387ページ中210ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング