少あるはずです。」
「あるにはありますわ。私の知ってる人にもありますわ。でも皆|厭《いや》な人ばかりですもの。……それに、ほんとのことを言いますと、自分の生きてる世界が私には不快なのです。けれども今ではもう、この世界を離れて生きられようとは私には思われません。習慣になってしまったのです。ある種の安楽と、それから、もちろん金では買えませんがしかし金がなければ得られない、贅沢《ぜいたく》と社交とのある精練さが、私には必要なのです。それがほんとうに輝かしいものでないことは、私も知っています。しかし私は自分自身をよく知っています。私は弱いんです。……ねえどうぞ、自分のつまらない卑怯《ひきょう》さを私がうち明けたからって、私から離れないでくださいね。私の言うことを快く聴いてくださいね。あなたと話すことはどんなにか私のためになるでしょう! あなたは強くて健全な方だと、私は感じていますの。あなたにすっかり信頼していますわ。少しは私の友だちにもなってくださいな、ねえ。」
「私も望むところです。」とクリストフは言った。「しかし私に何ができましょう?」
「私の言うことを聴いて、私に諭《さと》して、私に力を
前へ 次へ
全387ページ中209ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング