ませんわ。」
「そう言うのは多少いいことです。」とクリストフは純朴《じゅんぼく》な調子で言った。
彼女はしかられてる小娘のような極《きま》り悪げな様子で彼をながめ、そして言った。
「そんなに手《て》きびしくおっしゃるものではありませんわ。」
「私は善良な婦人の悪口を言ってるのではありません。」とクリストフは快活に答え返した。「善良な婦人は地上の楽園です。ただ、地上の楽園は……。」
「そうよ、だれも見たことがありませんわ。」
「私はそれほど悲観してもいません。私が言いたいのは、この私が見たことがないというのです。しかしそれは存在するかもしれません。存在してるなら見出したいものだとさえ思っています。ただ、見出すのが容易でないのです。善良な婦人と天才の男子とは、いずれも滅多にありません。」
「そしてその二つを除くと、他《ほか》の男や女は皆物の数にはいりませんか。」
「いやかえって、そういう男女こそ、物の数にはいるのです……世間にとっては。」
「でもあなたにとっては?」
「私にとっては、ないも同じです。」
「ほんとに手きびしい方ね!」とコレットはくり返した。
「少々です。少しは手きびしい者も
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