の肖像がかかっていた。流行児の一画家が描いたもので、眼には光がなく、身体は螺旋《らせん》状にねじ曲げて、百万長者の魂の世に稀有《けう》なことを表現するため、あたかも水なき花のように、憔悴《しょうすい》した姿に描かれていた。ガラス窓の壁口からは、白雪を頂《いただ》いた老樹が見えていた。――その大きな客間の中に、いつもピアノにすわってるコレットを、クリストフは見出した。彼女は際限もなく同じ楽句をくり返し、柔らかな調子はずれの響きで耳を楽しませていた。
「ああ、」とクリストフははいりながら言った、「また猫《ねこ》が喉《のど》を鳴らしていますね。」
「いやな方《かた》!」と彼女は笑いながら言った。
(そして彼女はやや湿っぽい手を彼に差し出した。)
「……まあ聴《き》いてちょうだい。りっぱじゃありませんか。」
「たいへん結構です。」と彼は冷淡な調子で言った。
「聴いていらっしゃらないのね。……よく聴いてちょうだいよ!」
「聞いていますよ。……いつも同じものですね。」
「ああ、あなたは音楽家じゃないわね。」と彼女はむっとして言った。
「それでも音楽のつもりですか。」
「え、音楽じゃないんですって?
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