くもこう言っている。
 『それが危険であることは僕も認める、中には毒がある。しかし才能に富んでるではないか!』
 あたかも軽罪裁判所で一無頼漢について判事が言うように、
 『此奴《こいつ》は悪者には違いない。しかしなかなか才能のある奴《やつ》だ!』」

 クリストフは、フランスの批評界はいったいなんの役にたつかを怪しんだ。といって、批評家がいないのではなかった。批評家は芸術家の方面にうようよしていた。多くの作品は人に見られることができなくなっていた。作品は批評家らの下に埋もれていた。
 クリストフは概して、批評界にたいして穏和ではなかった。近代社会中に第四もしくは第五階級のごときものを形成している、この無数の芸術批評家らの有用さを、彼はなかなか認めることができなかった。彼はそこに、人生をながめる務めを他人に譲ってる――他人の代理となって感じてる――一つの疲弊した時代の徴候を、見て取っていた。時代が自分の眼をもって、人生の反映たる芸術を見ることさえできなくなり、なお他の仲介者を、反映の反映を、一言にして言えば批評家を、必要としているということに、彼は多少恥辱を感じていた。それはしごくもっ
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