取りの考えによって、上品な社会の理想だと思うようなもの以外は、何一つ描くことができなかった。盗み取った金と無節操な女とを争って享楽せんとする、疲れたる道楽者や冒険者などという一握りの人々のみだった。
時とすると、ユダヤ的なそれら著作家等の真の性質が、ある言葉の響きに一種の不思議な反響を返して、眼をさまし、彼らの存在の深みから表面にのぞき出してきた。するとそれは、幾多の世紀と人種との異様な混和であり、砂漠《さばく》の息吹《いぶ》きであった。その息吹きは海の彼方《かなた》からこれらパリーの寝所の中へ、種々のものをもたらしてきた、トルコ市場の悪臭、砂の輝き、種々の幻影、陶酔したる肉感、力強い罵詈《ばり》、痙攣《けいれん》を起こしかけてる激しい神経痛、破壊にたいする熱狂、数世紀来影の中にすわっていたのが、獅子《しし》のように立ち上がって、自分自身や敵人種の上に、奮然と殿堂の円柱を揺り倒す、かのサムソン。
クリストフは鼻をつまんで、シルヴァン・コーンに言った。
「力はこもってるが、しかし臭い。たくさんだ。他《ほか》のものを見に行こう。」
「何を?」とシルヴァン・コーンは尋ねた。
「フランスを
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