さ。」
「これがフランスだ。」とコーンは言った。
「そんなことがあるものか。」とクリストフは言った。「フランスはこんなものじゃない。」
「フランスもドイツと同じだ。」
「僕はそう思わない。こんなふうの国民なら、長くはつづくまい。もう腐った臭《にお》いがしてるから。まだ他に何かあるに違いない。」
「これ以上のものは何もないんだ。」
「他に何かあるはずだ。」とクリストフは強情を張った。
「そりゃあ、かわいい魂の人たちもいるし、」とシルヴァン・コーンは言った、「そういう人たちのための芝居もあるさ。君はそんなのが見たいのかい。それじゃ見せてあげてもいい。」
彼はクリストフをフランス座へ連れていった。
その晩は、法律問題を取り扱った散文の近代劇が演ぜられていた。
クリストフには最初からして、どういう世界でそれが起こってるのかわからなかった。俳優らの声はこの上もなく豊量で緩《ゆる》やかで荘重で厳格だった。あたかも言葉づかいの稽古《けいこ》をでも授けるかのように、あらゆる綴《つづ》りを皆発音していた。悲しい吃逆《しゃくり》とともにたえず十二音脚をふんでるかと思われた。所作は荘厳でほとんど神前
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