論だけではなくて、あらゆる理論であった。ビザンチン式の論争、永遠にそして単に音楽のことばかりを言う音楽家連中の会話に、彼は悩まされた。最良な音楽家にも音楽を嫌《いや》にならせるほどだった。音楽家も時々はその対位法や和声を捨てて、よい書物を読んだり人生の経験を積んだりする方がいいと、クリストフはムソルグスキーと同じようなことを考えていた。音楽家にとっては、音楽だけでは十分でない。音楽だけでは、時代を達観し虚無を超越するまでにはいたらないだろう……。人生だ! 全人生だ! すべてを見、すべてを知ることだ。真実を愛し求め抱きしめることだ。真実――接吻《せっぷん》してくる者にたいして噛《か》みつく美しいアマゾンの女王ペンテジレアよ!
 音楽討論会や和音製造店などは、もうたくさんだ! それらの和声料理の饒舌《じょうぜつ》なんかは、怪物でなくて一つの生物たる新しい和声を発見する道をば、決して教えてくれないであろう。
 クリストフは、壜《びん》の中に侏儒《しゅじゅ》をでも孵化《ふか》させるために蒸留器を大事に温《あたた》めてる、それらワグナー派の学者たちに背を向けた。そしてフランスの音楽界から脱出して
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