リストフは、ワグナー派の芸術の強調的な暴戻《ぼうれい》さにたいする、革命的反動のその精神に、喜んで賛成した。このフランスの音楽家は、あらゆる熱烈な感情をも声低くささやかせようと、皮肉な慎重さで努めたかのようだった。愛も死も叫び声を挙げはしなかった。作中人物の魂の中で行なわれてる動乱も、旋律《メロディー》の線のかすかな震えによって、口角の皺《しわ》ほどの管弦楽のおののきによって、伝えられてるのみだった。あたかも作者は身を投げ出すことを恐れてるかのようだった。彼は趣味の天才をもっていた――がただ、フランス人の心の中に仮睡しているマスネー式なものが、眼を覚《さ》まして情緒を吐露するような瞬間は、別であった。そういう瞬間になると、あまりに金色な髪の毛やあまりに赤い唇《くちびる》が――激しい恋に駆られてる第三共和時代の中流婦人が、現われてくるのであった。しかしそういうのは例外であって、作者がみずから課した抑制のゆるんだがためだった。その他の部分には、精練されたる簡素さが、まったくの簡素ではなくて意志から来た簡素さが、古い社会の繊巧な花が、全体を支配していた。年少の「野蛮人」たるクリストフは、それ
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