ぱな労働者らは皆、多くの美徳をもっていた。クリストフはたいへん教えられるところがあったが、またひどく退屈して、その仲間からのがれ出た。のがれ出てよかった、実によかった……。
戸外はなんといい気持だったろう!
それでも、パリーの音楽家中には、あらゆる流派を脱して独立してる者が、幾人かあった。クリストフが興味を覚えたのは、そういう人たちばかりだった。彼らのみが、一芸術の生活力の程度を知らせるのである。流派や学会などは、皮相な流行やこしらえられた理論だけをしか示さない。しかし自分だけ離れて立っている独立者らは、その時代と民族との真の思想を見出すの機会を、より多く有している。それゆえにまた、外国人にとっては、他の者らよりも彼らの方がいっそう理解しがたいのは、事実である。
クリストフがある名高い作を初めて聞いた時も、実際そのとおりであった。フランス人らはその作を法外にほめたてていた。最近十世紀間にその例を見ない音楽上の最大革命だと、公言してる者もあった。――(十世紀といっても、フランス人には世紀ということが大した意味をなしはしない。彼らは自国の世紀以外のことはあまり考えない。)
テオフ
前へ
次へ
全387ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング