無理に一回り踊らした。ルイザは息を切らして、彼を狂人だと呼びたてた。それから彼女は手を打った。
「まあ!」と彼女は気懸《きがか》りそうに言った、「また恋したのに違いない!」
クリストフは笑いだした。ナフキンを宙に投げた。
「恋だって!……」と彼は叫んだ、「おやおや……嘘《うそ》です、嘘です、もうたくさんだ。安心していらっしゃい。もうするもんですか、一|生涯《しょうがい》しません!……あああ!」
彼は水をなみなみと一杯飲み干した。
ルイザは安心して彼をながめ、頭を振り、微笑《はほえ》んでいた。
「当てにはならない酔っ払いの約束だね、」と彼女は言った、「まあ晩までのことでしょうよ。」
「それだけでも何かになるわけですよ。」と彼は上|機嫌《きげん》に答えた。
「なるほどね。」と彼女は言った。「だがいったい、どうしてお前さんはそううれしがってるんですか?」
「僕はうれしんです。それっきりです!」
彼は食卓に両肱《りょうひじ》をつき、彼女と向かい合いにすわって、今後どんなことをするか、それを彼女に話してやった。彼女はやさしい疑念の様子でそれに耳をかし、スープが冷《さ》めてしまうと静かに注
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