。彼女はそれに気づいていた。しかし彼のうち明け話を求むることもなしかねたし、またどういうふうに求めていいかもわからなかった。思いきってやってみても、彼が胸につかえて言いたくてたまらながってるその思いを、ますます深く秘めさせるばかりだった。
多くの些細《ささい》なことのために、罪のない癖のために、彼女はまたクリストフをいらだたせて、間をうとくならしていた。人のいいこの老母は少しぼけていた。彼女は近所の噂《うわさ》話をくり返したがった。また保母めいた愛情をもっていて、人を揺籃《ゆりかご》に結びつける子供時代のくだらない事柄を、しきりにもち出した。しかしそれからのがれるには、一人前の男となるには、もう非常に骨を折ってきたではないか。しかるにいまさら、ジュリエットの乳母《うば》のごときが現われてきて、汚ない襁褓《むつき》や、くだらない考えや、また、幼い魂が卑しい物質と息苦しい環境との圧迫に逆らう、あの厄介《やっかい》な時代を、一々述べたてなければならないというのか!
それらのことの合い間には、彼女はいとやさしい愛情の発作を――あたかも赤ん坊を相手にしてるかのように――示すのであった。彼はそ
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