にはその泣き声が聞こえた。彼は身を切られるような思いをした。悔恨の情にとらえられて、夜通し眠れないで輾転《てんてん》しながら、床の中で苦しい声をたてた。それほど彼は母を愛していたのだ! なんのために彼女を苦しめなければならなかったのか?……ああ、苦しむのは彼女一人ではないだろう。彼にはそれがよくわかっていた……。なんのために運命は、愛する人々を苦しめるような使命をも果たさんとする欲求と力とを、彼のうちに置いたのであるか?
「ああ、もし私が自由であったら、」と彼は考えた、「もし私が、自分のなるべきものになろうとする、あるいはなれなかったら自分にたいする恥と嫌悪《けんお》とのうちに死のうとする、この残忍な力に縛られていなかったら、愛するあなたがたをいかに幸福ならしむることができることでしょう! けれどまず、私を生き活動し戦い苦しましてください。そしたら私はいっそうの愛をもっておそばにもどって来るでしょう。どんなにか私は、愛し、愛し、愛することだけをしたいんです!……。」
母の絶望的な魂の不断の非難が、もし黙っているだけの力をもっていたならば、彼は決してそれに対抗することができなかったろう
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