彼女は帰るために立ち上がった。彼も立ち上がった。二人は無関心な快活な調子で、別れの言葉をかわした。モデスタの手はクリストフの手の中で少し震えた。彼女は言った。
「今日はお歩きなさるにいい天気でしょう。」
 そして、間違えてはいけない曲がり道について、いろいろ注意してくれた。
 二人は別れた。彼は丘を降りていった。降りつくして振り返った。彼女は頂《いただき》の同じ場所に立っていた。ハンカチを打ち振って、あたかも彼の姿が見えるかのように合図をしていた。
 自分の不幸を否定するかかる強情さのうちには、ある悲壮なかつ滑稽《こっけい》なものが含まっていた。クリストフはそれに心を動かされまた苦しめられた。モデスタがいかに憐憫《れんびん》に価しまた嘆賞にさえ価するかを、彼は感じていた。そして彼は彼女といっしょに二日とは暮らせなかっただろう。――花の咲いた籬《まがき》の間の道をたどりながら、彼はまた、親愛なるシュルツ老人のことをも、あの澄んだやさしい老人の眼のことをも、考え及ぼしていた。その眼は、多くの悲しみが前を通っても、それらを見ることを欲せず、厭な現実を見ていないのであった。
「彼はこの俺
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