かつて専門の歌手らに完全に吹き込むことのできなかった、溌剌《はつらつ》さが熱情が現われていた。彼はポットペチミットをながめ、いぶかっていた。
「ほんとうに感じてるのかしら。」
しかし彼は相手の眼の中に、満足してる驕慢《きょうまん》心の炎以外に、なんらの炎をも認めなかった。無意識的な一つの力がその重い肉塊を動かしていた。その盲目的な消極的な力は、相手も知らず理由も知らないで戦う軍隊に似ていた。歌曲[#「歌曲」に傍点]の精神はその力をとらえ、その力は喜んで服従していた。ただ活動したかったからである。自分一人に任せられると、どうしていいかわからなかったであろう。
クリストフは考えた。宇宙の偉大なる彫刻家はその創造の日において、形のでき上がった被造物の離れ離れの各部を整頓《せいとん》することには、あまり心を用いなかったに違いない。いっしょに集まってうまくゆくようにできてるかどうかには頓着《とんじゃく》なく、ともかくも各部をくっつけてみたのだ。それで各人は、あらゆる方面から来た断片で作られることになった。そしてまた、同一人が別々な五、六人の中に分散することとなった。頭脳はある者の中にはいり、
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