リストフは二人をながめた。彼らの善良な懇切な顔に浮かんでる失望の色に、彼は心を動かされた。彼は言った。
「あなた方はほんとにいい人たちだ。……明日の朝|発《た》つことにしましょう。それでどうです?」
 シュルツは彼の手を取った。
「ああ、よかった!」と彼は言った。「ありがとう、ありがとう!」
 彼は子供のようになっていて、明日はいかにも遠く思われ、考えも及ばないほど遠く思われた。クリストフは今日発ちはしないし、今日じゅうは自分たちのものであり、一晩じゅういっしょにすごし、同じ屋根の下に眠るのだ。それだけのことをシュルツは思っていた。それから先はもうながめたくなかった。
 ふたたび快活になった。シュルツば突然立ち上がり、おこそかな様子をした。この小さな町と自分のささやかな家とを訪れてきてくれて、無上の喜びと名誉とを得さしてくれた賓客にたいし、感動した仰山《ぎょうさん》な祝杯を挙げた。喜ばしい彼の再来、彼の成功、彼の光栄、地上のあらゆる幸福、などを心から希望して、杯を干した。それから、「高尚なる音楽」のためにまた杯を挙げ――さらに、老友のクンツのために――さらに、春のために――そしてまたポ
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