ストフはなお演奏をやめないで、半ばふり返りながら言った。
「ね、このピアノはあまり上等でありませんね。」
 老人はひどく恐縮した。彼は詫《わ》びた。
「古物です、」と彼はつつましく言った、「私と同じです。」
 クリストフはすっかり向き返り、自分の老衰について許しを乞《こ》うてるような老人をながめ、笑いながらその両手をとった。彼はその誠実な眼を見守った。
「なに、あなたは、」と彼は言った、「あなたは僕より若いですよ。」
 シュルツはうちとけた笑いをして、自分の老体や疾病《しっぺい》のことを話した。
「いやいや、」とクリストフは言った、「そんなことじゃない。僕は真面目《まじめ》に言ってるんです。ほんとうでしょう、ねえクンツ。」
 (彼はもう「さん」という敬語を省いていた。)
 クンツはある限り力をこめてそれに賛成した。
 シュルツは自分のことと古いピアノとを結びつけようとした。
「まだごくいい音が出ます。」と彼はおずおず言った。
 そして彼は鍵《キイ》にさわった――ピアノの中間部の、幾つかの音を、半オクターヴばかりかなり鮮《あざ》やかに。クリストフはその楽器が彼にとっては旧友であることを悟
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