しかし書物こそは、彼にとって最上の慰安所であった。書物は決して彼を忘れることなく欺くことがなかった。彼が書物の中でいつくしんだ多くの魂は、今はもう時《タイム》の波を超越していた。その魂らは愛のうちに永久の確固不動さを保っていた。しかもその愛たるや、彼らが人の心のうちに喚《よ》び起こしかつみずからも感じてるらしいものであって、彼らを愛する人々の上に彼らが光り輝かしてくれるものであった。美学と音楽史との教授である彼は、小鳥の歌にそよいでる古い林に似ていた。それらの歌のあるものはごく遠くに響いていた。幾世紀もの彼方《かなた》から来るものだった。それでも十分にやさしく神秘的であった。また彼にとって耳|馴《な》れた親しい歌もあった。それらは親愛な道づれであった。それらの文句のおのおのは、過去の生涯の喜びや悲しみを思い起こさしてくれた。過去の生涯といっても、意識してるものも意識しないものもあった。(なぜなら、太陽の光に照らされるおのおのの日の下には、他の日々が展開していて、それを見知らぬ光が照らすのだから。)また最後には、欲求して長い間待ち望んでる事柄を言ってくれる、まだかつて聞いたこともない歌
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