彼の華奢《きゃしゃ》な長いよく手入れの届いた両手を認めた。それは彼の身体つきに似合わない、多少病的な貴族味をそなえていた。ハスレルはある和音のところでひき止め、瞬きをしたり音を鳴らしたりしながら、それをくり返しひいた。彼は種々の楽器の音を真似《まね》ながら、唇《くちびる》でやかましく音をたて、またたえず勝手な激語を音楽に交えていた。その激語には好悪の情がともにこもっていた。ひそかないらだちを、それとなき嫉妬《しっと》の念を、彼はみずから禁ずることができなかったのである。そしてまた同時に、貪《むさぼ》るように享楽していたのである。
彼はあたかもクリストフがそこにいないかのように、なお独語をばかりつづけていたが、クリストフはうれしさに真赤《まっか》になりながら、ハスレルの賛辞は自分にたいしてなされてるのだと思わずにはいられなかった。そして彼は、自分が何を作るつもりだったかを説明しだした。ハスレルは初めのうち、その青年が言ってることにはなんらの注意も払わないらしく、大声で自分一人の考えを言いつづけていた。が次に、クリストフのある言葉にはっとした。彼はさあらぬ体を装《よそお》って耳を傾けなが
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