満足していた。そして彼らが人生に求むるところのものはただ、生きること、ただパンだけを得ること、自分の思想を芸術の中に吐露すること、芸術家ならぬ単純真実なる二、三の善良な人々、もちろん彼らを理解はしないがしかし彼らを率直に愛する人々、それを見出すことばかりであった。――どうして彼ら以上に要求深くあり得られようか。人の求め得る幸福には限度がある。それ以上にたいしてはだれも要求の権利を有しない。過大の要求をなすことが許されるのは、自分自身にたいしてであって、他人にたいしてではない。」
そういう考えが彼の心を朗らかにしていた。そして彼は善良なる友ラインハルト夫妻をますます愛していた。この最後の情愛をも人々が争いに来ようとは、彼は思ってもいなかった。
彼は小都市の邪悪さを勘定に入れていなかった。しかし小都市の怨恨《えんこん》は執拗《しつよう》なものである――なんらの目的もないだけになおさら執拗である。おのれの欲するところを知ってる正しい恨みは、目的を達すれば鎮《しず》まってしまう。しかし倦怠《けんたい》のために悪を行なう者らは、決して武器を放さない。常に退屈しているからである。クリストフは
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