、よく知っていた。彼らのうちの数名の伝記を、彼はやや知り得ていた。ラインハルト家の蔵書から借り出したある種の書物は、十七世紀のドイツの音楽家らが通った恐るべき艱難《かんなん》な道と、それらの偉大な魂のある者――最も偉大なる魂、勇壮なるシュッツ――が示した泰然たる堅忍さとを、彼に知らしてくれた。焼かれたる都市、疾病に荒らされた田舎《いなか》、全ヨーロッパの軍勢に侵入され蹂躙《じゅうりん》された祖国、しかも――最も悪いことには――災禍にひしがれ困憊《こんぱい》し堕落して、もう戦おうともせず、万事に無関心となり、ひたすら休息をのみ望んでいる祖国、そういうもののまん中にあって、おのれの道を撓《たわ》まずたどっていったのである。クリストフは考えた。「かかる実例を前にして、だれが不平を唱える権利をもっていよう? 彼らには聴衆がなかった、未来がなかった。彼らはただ自分自身のためと神のためとに書いていた。今日書くものは明日のために滅ぼされるかもしれなかった。それでも彼らは書きつづけた。そして少しも悲しんでいなかった。何物も彼らからその勇敢な純朴《じゅんぼく》さを失わせ得なかった。彼らは自己の歌をもって
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