うにふりまいた。自著の教科書のことで関係があるライプチヒやベルリン書肆《しょし》へも、ある部数を送った。クリストフは少しも知らなかったが、かかる感心なまた拙劣なやり方は、少なくとも当座のうち、なんらの反響ももたらさなかった。方々へ送られた歌曲集は、なかなか的《まと》に達しないらしかった。だれもそれについてなんとも言わなかった。そしてラインハルト夫妻は、そういう無反響にがっかりして、自分たちの尽力をクリストフに隠しておいたことを喜んだ。なぜなら、彼がもしそのことを知ったら、発奮するよりもさらに多く悲嘆したろうから。――しかし実際においては、世間に毎度見られるとおり、何事も無駄《むだ》にはならない。いかなる努力も空には終わらない。数年間は結果が少しもわからない。ところがいつかは、意図の貫かれたことが現われてくる。クリストフの歌曲集[#「歌曲集」に傍点]も、田舎《いなか》に埋もれてる数人の善良な人々の心に、それと言ってよこすにはあまりに臆病《おくびょう》なあまりに倦怠《けんたい》してる人々の心に、徐々に達したのであった。
ただ一人、彼に手紙をよこした者があった。ラインハルトが書物を送ってか
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