いたくなる時には、舌を噛《か》んで口に出すまいとした。しかし間に合わなかった。きわめて温良で敬意深い良人は、このことに関して彼女へ控え目な注意をよく与えた。すると彼女は彼を抱擁して、自分は馬鹿でお言葉はもっともだと言った。しかしすぐあとで、彼女はまたくり返すのだった。ことにある種のことは最も言ってならない場合や場所において、彼女はすぐにそれを口にのぼした。もしそれを言い出さなかったら身体が張り裂けるかもしれなかった。――彼女はクリストフと気が合うようにできていた。
言ってならないから従って言いたくなる多くの変な事柄のうちでも、ドイツで行なわれてることとフランスで行なわれてることとの不穏当な比較を、彼女は何につけてもくり返した。彼女はドイツの生まれであった――(彼女ぐらいドイツ式な者はいなかった)――けれど、アルザスで育ち、アルザスのフランス人と交わったので、ラテン文明にひきつけられたのだった。多くのドイツ人やまた最も頑固《がんこ》そうに見える人々も、フランスから併合した地方においては、ラテン文明の魅力に抗することができないものである。なおありていに言えば、アンゲリカは北方のドイツ人と
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