ていた。喧嘩をしたくなかったのである。――彼がなんらかの価値あるものになり始めると、かかる屈辱を受ける破目に陥るだろうということを、数年以前、彼の前途が輝かしく有望であることを示していた時(その時彼は何にもしてはいなかったが)、その時に、だれが想像し得たであろうか。
学校における職務上、彼は自尊心を傷つけられる苦しみを多く嘗《な》めたが、そのうちで、義務的に同僚を訪問することも、彼にとってはやはりつらい仕事だった。彼はでたらめに二人を訪問してみた。そして非常に厭になって、訪問をつづけるだけの勇気が出なかった。とくに訪問を受けた二人は、別にありがたいとも思わなかったが、他の人々は、個人的に侮辱されたと考えた。皆の者はクリストフを、地位から言っても能力から言っても自分の目下に見ていた。そして彼にたいして保護者的な態度を取っていた。そして彼にたいする意見と自分自身とにいかにも確信ある様子をしていたので、彼にもその考えが感染してきた。彼は彼らのそばにいると自分が馬鹿になったような気がした。彼らに言ってやるべきことは何にも見当たらなかったではないか。彼らはおのれの職務でいっぱいになっていて、そ
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