言っていた。「彼らは僕が僕自身たることを妨げ得はしない。彼らの芸術、彼らの思想、それが僕に何になるものか。僕はそれを否定してやる!」

 世間を否定するのはきわめて痛快なことである。しかし世間は青年の放言壮語によってたやすく否定されるものではない。クリストフは真面目《まじめ》だった。しかし彼は自惚《うぬぼ》れていて、自分をよく知らなかった。彼は僧侶ではなかった。世間を見捨てる気性ではなかった。ことにそれだけの年齢に達していなかった。彼は最初のうちはあまり苦しまなかった。作曲に没頭していた。そしてその仕事がつづいてる間、なんらの不足も感じなかった。しかし、一つの作品が完成してから他の新しい作品が精神を奪うまでの間うちつづく、悄沈《しょうちん》の時期にはいった時、彼は周囲を見回して自分の孤独に慄然《りつぜん》とした。なんのために書いたかを彼は怪しんだ。書いてる間はそういう疑問は起こるものではない。ただ書かなければならない。それは議論のほかである。ところが次に、生まれた作品と顔を合わせる。作品を臓腑《ぞうふ》から迸《ほとばし》り出させた強い本能は沈黙してしまっている。なんのために作品が生まれ
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