《かっさい》に、彼は皮肉な喝采を交えまでして面白がった。
 ついにクリストフの交響曲《シンフォニー》の番となった。彼の桟敷の方へ管弦楽席や平場から幾つかの視線が向けられたので、彼は自分の出席が知れわたってることを見て取った。彼は奥に隠れた。彼は待った。楽長の指揮棒が上げられ、音楽の河水が沈黙のうちにあふれてきて、将《まさ》に堤防を破らんとする瞬間に、どの音楽家も感ずる一種の痛切な心地を、彼も感じた。彼はまだかつて、自分の作を管絃楽で聞いたことがなかった。彼が夢想した生物らは、いかなるふうに生き上るであろうか。彼らの声はどんなであろうか。彼は自分のうちに彼らが喚くのを感じていた。そして音響の深淵をのぞき込んで彼は、そこから出て来るものを震えながら待っていた。
 出て来たのは、名もないものであり、奇体な捏《ね》り細工だった。殿堂の破風《はふ》をささうべき堅固な円柱どころか、廃《すた》れた泥建築のように、和音は次から次へと崩壊していった。漆喰《しっくい》の埃《ほこり》よりほかには何も認められなかった。クリストフは自作が演奏されてるのだとはなかなか信じられなかった。彼は自分の思想の線を、律動《
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