人々にとって、ほんとうのドイツ人にとって、貴重であるあらゆるものを攻撃して、時間をつぶすのを私は許さない。お前はりっぱな音楽を書く方がよい。もしそれができなければ、音階や練習に精を出す方がよい。国家的光栄を誹謗《ひぼう》したり人々の精神を混乱さしたりして喜ぶ、音楽上のベーベルを私は欲しない。われわれはありがたくも、何がよいかを知っている。それを知るには、お前から説き聞かされるのを待つ要はない。だからお前はピアノに向かうがよい。そしてわれわれを平和にしておいてもらいたいのだ。」
でっぷり肥《ふと》った彼は、クリストフと顔を向き合わして、侮辱的な眼で相手の顔をうかがっていた。クリストフは色を失って、口をききたがっていた。その唇《くちびる》はかすかに動いていた。彼は口ごもりつつ言った。
「私は殿下の奴隷ではありません。言いたいことを言います、書きたいことを書きます……。」
彼は息をつまらしていた。恥辱と憤怒《ふんぬ》とに泣かんばかりになっていた。両足は震えていた。片|肱《ひじ》を急に動かしながら、傍《かたわ》らの家具に乗ってた器物をひっくり返した。自分の様子がいかにもおかしいのをはっきり
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