されていて、両側には木鉢《きばち》の橙樹《だいだい》が並んでいた。広場の中央には、四|隅《すみ》に徳をかたどった飾りのついてる台石の上に、ルイ・フィリップ式の服装をした、無名の大公爵の銅像が立っていた。ベンチの上にただ一人の散歩者が、新聞を広げたまま居眠っていた。官邸の鉄門のところには、無駄《むだ》な哨兵《しょうへい》らが眠っていた。邸前の高壇の馬鹿な溝《みぞ》の後ろには、眠ってる二門の大砲が、眠ってる町の上に欠伸《あくび》をしていた。クリストフはそれらのものの鼻先で笑ってやった。
 彼は官邸へはいっても、公式の態度を取ろうとはしなかった。たかだか微吟をやめたばかりだった。なお楽想《がくそう》が踊りつづけていた。彼は玄関のテーブルの上に帽子を投げ出しながら、子供の時から知ってる受付の老人を親しげに呼びかけた。――(その好々爺《こうこうや》は、クリストフが祖父とともに初めて官邸へ伺って、ハスレルに会ったあの晩から、すでにその地位にいたのである。)――その老人は、クリストフの多少失礼な冗談にもよく答えるのを常としていたが、その時は、横柄《おうへい》な様子を示した。クリストフはそれに気を止め
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