える間もなく、ぶしつけに尋ねた。
「あなたは、席がありませんか。」
彼女は顔を赤らめ、外国人らしい口調で言った。
「はい、ありませんの。」
「僕は桟敷《ボックス》を一つもってますが、始末に困ってるところです。いっしょにそれを使ってくださいませんか。」
彼女はなおひどく顔を赤らめ、承諾できない断わりを言いながら感謝した。クリストフは断わられたのに当惑して、自分の方から詫《わ》びを言い、なお頼んでみた。しかし、彼女が承諾したがってることは明らかでありながら、彼はうまく説き伏せることができなかった。彼はたいへん困った。そしてにわかに決心した。
「ねえ、すっかりうまくゆく方法があります。」と彼は言った。「切符を上げましょう。僕はどうだっていいんです。前に見たことがあるんですから。――(彼は自慢していた。)――僕よりあなたの楽しみの方が大きいでしょう。さあどうか、この切符をおもちなさい。」
年若な女は、その申し出とその親切な申し出方とにいたく心を動かされて、ほとんど眼に涙を浮かべようとした。そして、彼から切符を取り上げるようなことはしたくないと、感謝しながらつぶやいた。
「では、いっしょに
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