真の解決ではなくて、曖昧《あいまい》な状態をいつまでも長引かせる特権を含む解決を、好むからであった。次には、説得によらずとも少なくとも倦怠《けんたい》によって、彼を思うとおりにしてしまいたいと、人々はやはり望んでいたからである。
 クリストフはその余裕を彼らに与えなかった。彼は、一人の男が自分に反感をいだきながらそうだと自認するのを欲しないで、自分となお交誼《こうぎ》をつづけるためにしいて幻をかけようとつとめてるのを、はっきり感ずるように思う時には、自分はその男の敵であるということをりっぱに証明してやるまでは、決してやめないのであった。ワグナー協会のある晩餐会で、偽善に包まれた敵意の壁にぶつかった後、彼は理由なしの退会届をラウベルのもとに送った。ラウベルには合点がゆかなかった。マンハイムはクリストフのもとに駆け込み、万事を調停しようと試みた。クリストフは最初の一言をきくや否や、怒鳴りだした。
「いや、いや、断じていやだ。もうあいつらのことを言ってくれるな。僕はあいつらをもう見たくないんだ。……もう我慢できない、まったくできない。……僕は人間が厭《いや》でたまらないんだ。人間の顔を見るの
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